人間の存在理由(重力の功罪1) 第123回大阪日日新聞2008年7月15日掲載

重力はすべての宇宙物体の基礎であり支配者である。その力によって宇宙が存在し地球が誕生し地上の生物が創造された。重力の三原則は規範性、対抗性、求心性であると何かの書物で読み、なるほどその通りだと思った。宇宙の構造だけでなくわたしたちのような生物の精神構造にも影響を与えている。

例えば、地上のすべての物体及び生物は「求心性」に捉えられている。天体はすべてこの力によって成り立ち宇宙空間にぽっかりと浮かんでいられる。わたしたち生物は、それを応用し子が親を、親が子を求める心を持つことによって生存する。それなしでは成長ができず死んでしまう。

親が子に乳を与え、食べさせ、生き方を教え成長するまで守ろうとする心は、重力の求心性を初めからインプットされているからだ。そこから分派し発生したのが種々の愛情であり感情である。他を引き付けたり引き付けられたりするはたらきでもある。これによって異性に惹かれ子孫を残し生命のリレーを行う。

兄弟愛や親子愛などもその種類だろう。悲しい、辛いなどの感情がまた対抗性から派生したものと入り交じって嫉妬(しっと)心や執着心が生まれたと思われる。それらは私たち人間の中に深く根付き内在する。そして精神の発展を妨げている。求心性により私たちの精神は内へ内へと向かい、外に向かって広がっていかない。

自分の住む身近なことに関心を持てても、別の市町村へ、別の国へ、地球全体へとは、なかなか考えにくいように重力の段階からインプットされているのだ。自分の周りの環境さえよければ他はどうでもよいと思うようにできている。

打破しこの壁を乗り越えられるようになるには、やはり教育しかない。その教育は平和へと導く鍵となる。また重力によって同じ心を人間も動物も等しく持っていることに目覚めれば自分を救うことにつながる。重力こそが神という存在なのかもしれない—。

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