金に隷属する知識と思考Ⅱ 第174回2009年7月28日大阪日日新聞掲載

どんなことにも3原則というものがある。非核三原則、憲法の三原則とか。3という数字はまとめるのに適しているようだ。人が生きていく上にも身につけるべき3原則がある。①家庭知識の原則②学問知識の原則③社会知識の原則である。①は日常生活・衣食住・家族の在り方などの知識である。これは年齢を増すにしたがって身につけるべき内容も増していく。

例えば、幼い頃は自分でトイレに行ったり着替えたり食べることができればよいが、青年期になると家事を手伝ったり家族を思いやったりすることができなければならない。大人になれば家族全体の調和を図り生活を支える必要がある。段階を追って内容が拡大されていく。一人前の大人になるということである。

ここまで導いていくのは親の役割であり、子供が幼い頃の家庭知識しか持たずに育てば親の責任である。そんな子供は最低限の自分のことしかできないので親が一生面倒を見ることになる。最近、そのような傾向に成りつつある。②は学校や自分で学習する知識であり、③は一歩家を出たところから始まる社会生活の知識である。

学生の時は②も③も学校と家庭で身につける。また、周囲の大人すべてが教えることも可能である。最近はよく大人が「勉強しなくても生きる力があれば」と口にする。これは誤りである。生きる力をつけるには物事をよく理解しなければならない。物事を理解するには思考能力が必要となる。思考能力は何もせずには養われない。

学生の時に学校や家庭での学業を通し身に付いていく。しかし、勉強の好きな学生は少ない。そこで親や教師の役割が重要となる。基盤となる勉強を繰り返しさせ最低限の知識を得るように導き、自ら考える能力をはぐくむ。そのかかわりの中で社会知識も養われていく。

こう突き詰めていくと教師であり親であれ、会社員であれ社会人として大人の在り方が以下に社会に多大な影響を及ぼすか、分かっていただけるだろう。現代の若者批判をしている大人は、自分の批判をしているに等しいことになる。

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