人間の存在理由(重力の功罪6)第128回2008年8月19日大阪日日新聞掲載

もう少し分かりやすく身近な具体例を挙げて、重力の三原則がどんなに深く何もかもすべてと結びついているかを述べておこう。重力の三原則に照らすと「好き」という感情は求心性、「嫌い」というそれは対抗性、「好き嫌い」を理性でコントロールしようとする行為が規範性に当たる。

詳しく言い換えると、人を好きになるという心の動きは相手の心を求め、自分の心に引っ張り込み、その中に閉じこめようとする働きである。一方、人を嫌いになるということは、対立する心の働きである。不快感を避けようとしたり、危険から遠ざかろうとしたり、自分の心に発生した違和感から相手を寄せ付けないようにする心の働きである。

しかし、好き嫌いだけで判断し行動すると困ることが生じる。社会を構成する一員として未熟であるということになったり、集団行動をするには不的確な存在ということになる。そのため、好き嫌いという感情を理性で調整しなければならない必要性が生じる。それこそが社会の規範性なのである。

また、もう一つの例は生命の連鎖について—。人間も他の生物も、異性に求愛(求心)をし、それを維持するため他を寄せ付けない対抗が稼働し、子どもをつくり自分の種を残そうとする規範がはたらく。

子どもができた時点から、三原則の形が少し変化する。親は子を慈しみ乳や食物を与え、外敵から身を守り、子も親を求める求心性。親が子を外敵から守り、子は親の愛情を他の者より得ようとする対抗性。生活を維持するために親は規則正しく仕事をし、子どもは親から規則正しさを教わり規範性となる。動物の場合は自然のルールに従う規範性である。

動物の場合は人間よりも規則正しく、日の出と共に起き食物を探しルールを守る。それができなければ死ぬしかないからだ。人間以外の生物は三原則に忠実にバランスよく生きている。しかし、今、動物以下の人間が多くなっている。

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